2008年 11月 14日
林道三星線「三星橋」の違法通行許可 |
今月11日、14トン以上の車輌は通行規制のある林道三星線の高津川に架かる「三星橋」を、大型ダンプが通行していると通報があったのは既報のとおり。
違法通行許可の法的根拠は「条例」!?
早速、現地に飛んで状況を見ると、驚いたことに、橋の国道9号線側に昨年新設された、通行できる車輌の重量制限「14トン未満」を表示する標識が撤去されているではないか。念のため、橋を渡って反対側に行ってみると、こちらには明確に「14トン」以上の車輌は通行できないという標識が立っている。
昨年の暮れ、この重量制限を示す標識は、道路管理者である益田市といえども、島根県の公安員会の許諾がなければ設置できないという理由で、ずいぶん長い時間をかけて設置されたものだ。しかも、設置後しばらくは黒い布で覆われていた。これは公安員会の検査を受けないと取り外せないということだった。ここまで法を厳重に順守して設置された標識が、いとも簡単に撤去されるというのはどういうことなのだろうか。毎度のことだが、益田市のすることはよく理解できなかったのだが、今日市役所でその理由を尋ねると、土台部分の劣化で一時的に撤去したもので、近日中に復旧させるとのことだ。
しかし、橋の両側に14トン以上の車輌の通行禁止の標識を立てて、市長の許可があれば通行できるという益田市の措置はどういう法令根拠根拠に基づくものか知りたかったので、市役所に電話したところ、来庁すれば永岡農林部長が説明するという。
それで早速市役所を訪れ、説明を聞くことにした。市役所では、永岡部長と椋課長が同席し、説明を受けた。
結論から言うと、14トンの重量規制があるにもかかわらず、通行を許可した根拠は益田市の「農林道管理条例」だと言う。先日、全文を掲載したのだが、ここは重要なところだから再掲する。
益田市農林道管理条例
平成9年3月25日
益田市条例第8号
(目的)
第1条 この条例は、益田市農道台帳及び益田市民有林林道台帳(以下「台帳」という。)に登載された農道及び林道(以下「農林道」という。)の管理について必要な事項を定め、その効用を高めるとともに、その利便性を増進し、もって通行の安全を期することを目的とする。
(管理者)
第2条 農林道の管理者は、市長とする。
(市長の責務)
第3条 市長は、農林道の現況を台帳に記載して管理するとともに、農林道を常に良好な状態に保つように維持管理を行い、通行の安全を保つように努めなければならない。
(農林道の利用者等の責務)
第4条 農林道の利用者等は、通行の安全を保つための市長の維持管理行為に協力しなければならない。
2 農林道の利用者等は、農林道を損傷し、又は汚損する等の通行の安全を妨げるような行為をしてはならない。
3 農林道の利用者等は、農林道の損壊その他の事由によりその利用が危険である箇所を発見したときは、市長に通報しなければならない。
(通行の禁止又は制限)
第5条 市長は、次の各号のいずれかに該当する場合は、区間及び期間等を定めて農林道の通行を禁止し、又は制限することができる。
(1) 農林道の損壊その他の事由によりその利用が危険であると認められるとき。
(2) 農林道に関する工事のため、やむを得ないと認められるとき。
2 市長は、農林道の保全を害する恐れがあると認められる車両について、その通行を禁止し、又は積載物の重量等の制限をすることができる。
3 前2項の場合において、市長は、農林道の利用者等に周知させるため、あらかじめ必要な箇所にその旨を掲示しなければならない。
(施工及び占用)
第6条 農林道の施工に関しては、市道の例による。
2 農林道の占用に関しては、益田市道路占用料徴収条例(昭和29年益田市条例第26号)を準用する。
(その他)
第7条 この条例に定めるもののほか、農林道の維持管理に関しては、市道の管理の例による。
附 則
(施行期日)
1 この条例は、平成9年4月1日から施行する。
(経過措置)
2 美都町の編入の日前に、編入前の美都町林道維持管理規則(昭和45年美都町規則第2号)の規定によりなされた処分、手続その他の行為は、それぞれこの条例の相当規定によりなされたものとみなす。
附 則(平成16年10月22日条例第101号)
この条例は、平成16年11月1日から施行する。(以上、条例全文引用)
さて、行政法務に詳しい読者もいるようだから、ここで一緒に考えていただきたいのだが、この条例の中のどの条文が、14トンを超える車輌の重量規制のある林道の橋梁の通行を許可できる部分があるのだろうか。
なお、林道の設計・施工・管理にあたっては、 「林道規定」 (昭和48年4月1日 林野道第108号 林野庁長官通達〔最終改正〕平成3年4月1日 3林野基第264号がある。
これは、林道の管理および構造に関する基本的事項を定め,森林の管理経営上適正な林道の整備を図ることを目的として制定されたもので、基本的には、林道の橋梁はこの規定に基づき設計されている。
規定の全文はリンクを貼り付けておくので後でご覧いただきたいが、このなかに、自動車道の構造(第3章)があり、設計車輌、設計速度、勾配など、細則が定められている。
当然ことであるが、この中には橋、高架の自動車道について、自動車道の設計に用いる設計車両の荷重が定められている。(第28条)これによると、2級(等)林道である「林道三星線」の橋梁の設計は14トンであることが判る。
また、この規定に基づいて作られた 「林道必携」 ( 設計積算編/日本治山治水協会 日本治山治水協会)にも明確に設計荷重の設定がしてあり、14トン荷重の設計となっている。
確かに林道は、森林法の規定に基づいて設置されるものであり、道路法・および関連法規(道路構造令など)の枠外にある。しかし、実際には、林道の橋梁も道路法第30条2項「橋、高架の道路等の技術基準」、通称「道路橋示方書」に準じて設計されている。したがって、道路橋示方書は法律の一部と考えて差し支えない。
また、一般の用に供される林道については、道路交通法・道路運送車両法などの規定は適用される。これらの法律は、橋梁の設計荷重を超えた車輛が通行することについては、緊急避難など極めて特殊な事態を除き許可することはない。まして、一企業のために恒常的な通行許可などあり得ない。
さて、永岡農林部長の説明によると、今回の違法通行の許可は、地元自治会と益田興産、それに益田市の三者で協議した結果だと言う。(この林道は地元自治会が所有する道路ではない)こうした道路交通法や道路運送車両法を無視した行為が、市長の裁量権として法的にも社会的にも是認されるはずはないと思うのだが、永岡部長は正当な行為だと言っている。
その法的根拠は、前掲の「益田市農林道管理条理」の中にあると言う。さて、どの部分が該当するのか、読者諸氏も一緒に考えていただきたい。回答は後日発表する。
ただ、この条例のなかで該当する部分を探す間は、日本が法治国家であることを忘れないと難しいかもしれない、ということを付け加えておこう。
by nakayama-yutaka
| 2008-11-14 00:51
| 疑惑の連鎖
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