2008年 03月 27日
学習能力のない組織 |
地に堕ちた信用
最近の役所は、上から下まで狂っているらしい。というか、元々狂っていたのが情報開示の制度化、情報伝達の多様化、それに内部通報制度などによって表に出てきたということもあるのだろう。つまり、これまでは単にバレなかっただけのことなのだ。
道路特定財源を使って、休日に職員が釣りに使う「魚群探知機」を買っていた役所は、テニスボールも買っていたという。取材に対して、「昔は、そのような使い方も容認されていた。」と役所の長が答えていたが、役人の遊びの道具を税金で買うことが許されないのは今も昔も同じだろう。
公私の区別なく自由に使えるタクシー券、役所丸抱えの慰安旅行、数百万円のマッサージ機に、天下り先への法外な金額の随意契約、イージス艦の無人操縦による殺人等々、この種の話はキリがない。
未だに2千万件に上る宙に浮いた年金はどこへ消えたのか。おそらく何兆円もの金だろうが、この杜撰な管理は昔から続いていたことで、最近になってバレただけのことだ。
現役の農水大臣が自殺して、農水省やその天下り団体の破天荒な金の使い方も解明されないまま忘れ去られようとしているが、役所の中身が本質的に変わったわけではない。
本質的に変わらないから、同じ失態を繰り返すのである。
グラントワの教訓はどこへ行ったのか?
平成15年に「島根県芸術文化センター(グラントワ)」の工事着工前、この敷地が大きな木工工場であったことから、輸入材の脱塩プールで砒素を使用した可能性があり、その周辺を中心に表土に含まれる砒素化合物の調査を行った。
その結果、敷地内の4箇所で環境基準を上回る砒素が検出された。そこで、島根県はこの汚染部分を排除した後、工事に着手した。
しかし、無害とされていた工事残土置き場周辺の住民から確認のための調査を求められた島根県がこれを調査したところ、砒素が検出された。
表層の残土を除去した後、工事に着手して地面を掘削した。このとき、地下にあった「海成層」(海成層とは、かつて海底に堆積し、その後、地盤の上昇に伴って陸地化したもの)に含まれていた砒素等の亜重金属類が他の多くの工事残土と混じりあい、結局発生した工事残土すべてから砒素が検出される結果となったのである。
このため、島根県は砒素処理のために10億円を超える出費をせざるを得なくなった。そのうえ、一部洗浄などの無害化処理を行った残土も、島根県の説明不足で、どの地域も埋め立て土としての搬入を拒んだため、グラントワ敷地内の駐車場予定地に積み置きする以外になくなった。(施設の収容人数に比して、極端に駐車場スペースが不足しているのはこのためでもある。)
事前調査に数百万円単位の予算を割けば、これだけ多額な出費は回避できただろう。
ここら一帯がかつては海底であり、その後の隆起によって形成された地形であることは少し地学の知識があれば容易に理解できることである。また、海成層の一部には土壌溶出量基準、土壌含有量基準を超過する鉛、フッ素、砒素などの重金属・亜重金属類が含まれていることが多いことは、そこそこの専門家技術者なら知らないはずがない。
また、検出された砒素濃度は、直ちに住民の健康に影響を与えるものではなく、適切な洗浄や不溶化処理をすれば、土壌溶出量はかなり減少することもよく知られていることである。
事前に綿密な調査を行い、砒素が許容基準を超えたエリアとそうでないエリアを区分し、分割した処理をすれば、搬出したすべての残土の砒素処理をする必要はなかった。そうすれば、かなりの、おそらく億円単位の経費は縮減できたはずである。
また、検出された砒素が自然的原因によるものであり、その濃度は直ちに健康に影響を与えるものではなく、しかも、適切な処理をすれば基準値を大きく下回るということを住民にきちんと説明すれば、経費の節減もさることながら、もう少しは広い駐車場が確保できたはずである。
学習能力のない組織
長沢トンネルでは、このグラントワの教訓がまったく生かされていない。
おそらく、ここでも事前の調査は実施しているのだろう。そして、その段階では基準を超える砒素は検出されなかったことは事実かもしれない。しかし、工事が進捗するに連れて、砒素などの重金属類を多く含むであろう岩盤に工事関係者は気付いていたと思われる節がある。
本紙が独自で行った検査結果を持って島根県の担当者と面談した直後、その検査結果の採取地も確認しないまま工事を中断したのだから、この推測は外れていないはずだ。
しかし、高濃度の砒素を含む可能性のある岩盤に到達した段階で、なぜ工事を中断しなかったのか。砒素が許容基準を超えたエリアとそうでないエリアを区分することなく工事を進めたため、搬出したほとんどの残土55,600㎥に砒素が混入する結果となった。
グラントワでの処理対象となった残土は、当時の新聞報道によれば35,000㎥。この処理費が総額9億2600万円(当初の島根県の公表数値、その後さらに増額されたようだが詳細は不明。しかし、少なくともこのくらいの血税が投入されたのは事実)だから、仮に同程度の処理をすると仮定すれば、処理単価26,457円/㎥で実に14億7000万円もかかる計算になる。
どこまで学習能力のない組織なのだろう。
この責任は誰がどうとるのか。
誰も責任をとらず、担当者の処分もなく、今後の処理方法も、また「国道488号長沢トンネル土壌汚染対策検討委員会」にお任せか。
確かに、最近の役所は、上から下まで狂っている。
最近の役所は、上から下まで狂っているらしい。というか、元々狂っていたのが情報開示の制度化、情報伝達の多様化、それに内部通報制度などによって表に出てきたということもあるのだろう。つまり、これまでは単にバレなかっただけのことなのだ。
道路特定財源を使って、休日に職員が釣りに使う「魚群探知機」を買っていた役所は、テニスボールも買っていたという。取材に対して、「昔は、そのような使い方も容認されていた。」と役所の長が答えていたが、役人の遊びの道具を税金で買うことが許されないのは今も昔も同じだろう。
公私の区別なく自由に使えるタクシー券、役所丸抱えの慰安旅行、数百万円のマッサージ機に、天下り先への法外な金額の随意契約、イージス艦の無人操縦による殺人等々、この種の話はキリがない。
未だに2千万件に上る宙に浮いた年金はどこへ消えたのか。おそらく何兆円もの金だろうが、この杜撰な管理は昔から続いていたことで、最近になってバレただけのことだ。
現役の農水大臣が自殺して、農水省やその天下り団体の破天荒な金の使い方も解明されないまま忘れ去られようとしているが、役所の中身が本質的に変わったわけではない。
本質的に変わらないから、同じ失態を繰り返すのである。
グラントワの教訓はどこへ行ったのか?
平成15年に「島根県芸術文化センター(グラントワ)」の工事着工前、この敷地が大きな木工工場であったことから、輸入材の脱塩プールで砒素を使用した可能性があり、その周辺を中心に表土に含まれる砒素化合物の調査を行った。
その結果、敷地内の4箇所で環境基準を上回る砒素が検出された。そこで、島根県はこの汚染部分を排除した後、工事に着手した。
しかし、無害とされていた工事残土置き場周辺の住民から確認のための調査を求められた島根県がこれを調査したところ、砒素が検出された。
表層の残土を除去した後、工事に着手して地面を掘削した。このとき、地下にあった「海成層」(海成層とは、かつて海底に堆積し、その後、地盤の上昇に伴って陸地化したもの)に含まれていた砒素等の亜重金属類が他の多くの工事残土と混じりあい、結局発生した工事残土すべてから砒素が検出される結果となったのである。
このため、島根県は砒素処理のために10億円を超える出費をせざるを得なくなった。そのうえ、一部洗浄などの無害化処理を行った残土も、島根県の説明不足で、どの地域も埋め立て土としての搬入を拒んだため、グラントワ敷地内の駐車場予定地に積み置きする以外になくなった。(施設の収容人数に比して、極端に駐車場スペースが不足しているのはこのためでもある。)
事前調査に数百万円単位の予算を割けば、これだけ多額な出費は回避できただろう。
ここら一帯がかつては海底であり、その後の隆起によって形成された地形であることは少し地学の知識があれば容易に理解できることである。また、海成層の一部には土壌溶出量基準、土壌含有量基準を超過する鉛、フッ素、砒素などの重金属・亜重金属類が含まれていることが多いことは、そこそこの専門家技術者なら知らないはずがない。
また、検出された砒素濃度は、直ちに住民の健康に影響を与えるものではなく、適切な洗浄や不溶化処理をすれば、土壌溶出量はかなり減少することもよく知られていることである。
事前に綿密な調査を行い、砒素が許容基準を超えたエリアとそうでないエリアを区分し、分割した処理をすれば、搬出したすべての残土の砒素処理をする必要はなかった。そうすれば、かなりの、おそらく億円単位の経費は縮減できたはずである。
また、検出された砒素が自然的原因によるものであり、その濃度は直ちに健康に影響を与えるものではなく、しかも、適切な処理をすれば基準値を大きく下回るということを住民にきちんと説明すれば、経費の節減もさることながら、もう少しは広い駐車場が確保できたはずである。
学習能力のない組織
長沢トンネルでは、このグラントワの教訓がまったく生かされていない。
おそらく、ここでも事前の調査は実施しているのだろう。そして、その段階では基準を超える砒素は検出されなかったことは事実かもしれない。しかし、工事が進捗するに連れて、砒素などの重金属類を多く含むであろう岩盤に工事関係者は気付いていたと思われる節がある。
本紙が独自で行った検査結果を持って島根県の担当者と面談した直後、その検査結果の採取地も確認しないまま工事を中断したのだから、この推測は外れていないはずだ。
しかし、高濃度の砒素を含む可能性のある岩盤に到達した段階で、なぜ工事を中断しなかったのか。砒素が許容基準を超えたエリアとそうでないエリアを区分することなく工事を進めたため、搬出したほとんどの残土55,600㎥に砒素が混入する結果となった。
グラントワでの処理対象となった残土は、当時の新聞報道によれば35,000㎥。この処理費が総額9億2600万円(当初の島根県の公表数値、その後さらに増額されたようだが詳細は不明。しかし、少なくともこのくらいの血税が投入されたのは事実)だから、仮に同程度の処理をすると仮定すれば、処理単価26,457円/㎥で実に14億7000万円もかかる計算になる。
どこまで学習能力のない組織なのだろう。
この責任は誰がどうとるのか。
誰も責任をとらず、担当者の処分もなく、今後の処理方法も、また「国道488号長沢トンネル土壌汚染対策検討委員会」にお任せか。
確かに、最近の役所は、上から下まで狂っている。
by nakayama-yutaka
| 2008-03-27 19:57
| 砒素騒動
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