2012年 07月 30日
市長選 |
選挙後記
「二元代表制」の危機
山本浩章選挙事務所では、当選確実のテレビ報道が流れると支持者らは一斉に「やったー」との歓声がわいた。同選挙対策本部長である安達幾夫市議は、「支援市議14人が一団となって支援した結果」だと、市議主導による選挙の勝利だと挨拶した。
(意味不明の発言である。新聞報道によると、支援した市議は17人だった。本紙の取材でも17人だったのだが選挙が終わったら14人になった。17人は共産・公明の市議をカウントしたものだったので、これらを除外した自民党系・社民系の議員だけでも15人のはずだ。そうすれば、これらの議員の内の1名は誰なのか、単なる間違いなのか、それとも内部に寝返り議員がいたのだろうか。いずれにして単なる間違いでは済まされる話でもなさそうだ。)
しかし、勝利した最大の原因は市民の常識的意思の表れである。「支援市議14人が一団となって支援した結果」だというのは余りにも僭越な話ではないだろうか。
地方自治体は国の議院内閣制と違って「二元代表性」であることはいうまでもない。したがって、地方議会には与党、野党の区別はないのが建前だ。首長が提案する予算などの議案については、その都度、是々非々の議論を重ね、市民全体の利益となるかどうかを確認して表決するのが真っ当な議員であり議会なのだ。
誰であれ首長選挙に利私欲のために立候補する者が皆無とはいわないが、一般的にはその手法が違うだけで住民の福祉向上を目指すものだ。しかし、人間は完璧ではない。そこで、首長の行き過ぎの施策を抑制し、最善と思われる施策は後押しするというのが「二元代表制」における議会の役割である。
ところが、今回の市長選挙はどうか。現職の議員が、告示前には「地元選挙区」に市長候補者を連れて回り、告示後は双方の候補の選挙カーに乗り込み、窓から体を乗り出して「よろしくお願いします」と恥ずかしげもなく大声を出していた。本紙も長年各地の首長選挙の取材をしてきたが、今回のような常軌を逸した議員の街宣活動を見たのは初めてだ。
この選挙を通じて、かつてない益田市の落ち込みは、市長の良否に加え、「二元代表制」の本質を無視した議会の資質の低下であることを選挙民は注視すべきだろう。
議会の機能不全
今回の首長選挙に際して、多くの議員から「今の市長は言うことを聞かない」という声を聞いた。しかし、言うことを聞かせられなかった議会の責任を問うことはしない。一般質問を聞いていても、市長が答弁すると反論できない議員が多過ぎる。ろくに事前の資料集めもしないで、思いつきの素人質問を繰り返して、松下政経塾でディベート技術(反問する議論の形態)を叩き込まれた市長に手も足も出ない、「市長は言うことを聞かない」もないだろう。
議会や市職と対立、福祉の切り捨てをマスコミは懸念し、悪政との批判がこの4年間に浸透して新市長候補の出馬に期待したものだ。
本誌は2008年から福原市政の愚策を暴露してきた。市議会も市職も行き過ぎた市政をけん制してきたというが、民意が市長の行き過ぎを是正することはできなかった。そこで新生・山本氏が出馬を決意した。その時点(3月)では7:3で山本氏の出馬に市民は喝采を浴びせた。しかし、選挙が過熱になるとあらゆる方法で盛り上げ策を講じた福原氏が此処まで挽回したという感じがする。
もう一度言うが、市議主導の選対が山本氏に勝利をもたらしたものではない。余りにも福原市政が強引で民意に逆行した愚策であったことが人気を落とした原因である。議会多数派や各種団体、市職などの労働組合組織力を敵に回し都市型ムード選挙を展開したことが敗因であろう。選挙にも益田市のアイデンティティ(独自性)がある。
山本支持票は福原批判票が7割と、本人が40回にわたる個人座談会で支持を集めたものが3割であろう。攻めの選挙ではなく守りに徹した選挙だったといえよう。
by nakayama-yutaka
| 2012-07-30 11:12
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