2009年 11月 06日
行政監視 |
行政・議会に透明性と説明責任を
これまで、行政に対する有権者の発言力、影響力を増すため、投票率の低い若年層を中心に、選挙に行って投票することを強く勧めてきた。
しかし、投票による意思表示だけでは限界がある。選挙終了後、有権者の行政への影響力が急速に落ちてしまう可能性がある。その結果、投票期間中に有権者に約束したことが実際には、全く行われないというリスクが生じることになる。従って、投票も重要だが、より重要なのは、首長と行政に対し、選挙前に約束した政策課題をきちんと実行させる仕組みをどう作るかということである。
本紙の提案はマニフェスト(公約)に対して、必ず数値目標と、その目標を達成するための行動計画をセットで提示するよう義務づけることだ。
そして、達成できなかった時は「なぜできなかったのか」についての説明を義務づける。もちろん、さまざまな外部要因で達成できないこともあるだろう。その場合にも、きちんと説明してもらうことが、目標達成のための方向修正を首長、行政に促すことになる。コミットメントと結果に対する説明責任がセットになっていれば、次の選挙の時、その候補者を選ぶべきかどうかの分かりやすい判断材料になる。
このような数値目標は、企業の経営ではごくごく一般的なことだ。住民が最も望んでいる格差の是正や教育の充実、子育て環境の整備、情報開示などの分野においては、分かりやすく納得できるような数値目標はまだ、十分には掲げられていない。
さらに、数値目標の実現には、多くの予算配分が必要なケースが出てくるが、現在、予算編成は必ずしもオープンな場で討議されていない。編成時の論議が見えないため、なぜ、ある分野には予算が潤沢に配分され、違う分野には十分な配分がされていないのか、有権者にはたいへん分かりにくくなっている。
従って、数値目標を達成するには、予算編成がオープンな場で話し合われ、それを有権者がしっかり監視できるようにすることが必要だ。すなわち、数値目標の明確化と、それを実行するための予算編成討議の公開、この二つをセットにすることで、選挙と選挙の間でも、有権者の意思が実現しやすい環境が整える。
再建団体の方が楽?
県内のある自治体。市町村合併せず単独自立を余儀なくされている自治体も、財政事情は火の車だ。地方交付税が減らされ、基金も残り少ない。2、3年後、予算を組めるかどうか分からない。
窮状ぶりを訴える首長の口から、地方を切り捨てるような国の施策への恨み節が続く。そして、語気を強めた。
「近い将来、財政再建団体になるかもしれんが、そうなってもかまん。別に悪いことじゃない」、「ここまで追い込んだのは国だ。国が管理して財政を再建して見せてほしい」
他市町村の職員からも最近、「いっそのこと財政再建団体になった方が楽だ」といった言葉を時々聞く。だが、本当にそうだろうか。
議会機能も停止
財政再建団体とは、民間企業の倒産に当たる状態。自治体の標準財政規模に占める赤字額が都道府県で5%、市町村で20%を超えた時、国や県の厳しい管理、監督の下で財政再建を進める。
それでは、再建団体になると具体的にどうなるのか。 例えば、保育料の減免や延長保育などのサービスはなくなる。保育士の数も国の基準通り。保育所の統廃合も進む。乳幼児医療費の助成など市町村が独自で行ってきたサービスも縮小、廃止。市町村道の整備も、基本的に災害復旧工事以外はできない。
予算執行をチェックする市町村議会の機能も、事実上停止される。まさに、自治権の剥奪(はくだつ)と言っていい状態だ。
「国は自治体が『死なない程度』のぎりぎりの予算しか措置しない。サービスは最低、逆に住民負担は最高の水準を強いられる」と、ある職員は指摘する。
昭和30年代、県内でも市町村が財政再建に喘いだ。だがその後、高度経済成長という“神風”が吹いた。交付税措置は拡大され、各市町村は我慢を強いられながらも借金を完済、再建団体から脱却した。
しかし、現在はあまりにも状況が違う。手厚い交付税は期待できないし、経済成長の“神風”など吹く気配もない。今、再建団体に転落したら、何十年かかってもそこから抜け出せない可能性もある。
「『再建団体になった時は、保育料を4万円でも5万円でも支払う』と住民が納得しているならいいが…。首長や職員、議員は再建団体になることの厳しさを、住民にどこまで説明しているのでしょうか」。先の職員は疑問を投げ掛ける。
モラルハザード 《道徳、倫理の欠如》
交付税削減が先行し税源移譲が進まない国の改革に、市町村は不信感を募らせる。しかし、財政がここまで窮迫したのは国の責任だけではない。
不況に苦しむ民間企業を目の当たりにしながら、多くの市町村が「わたり」や退職時の特別昇給など、不適正な給与体系を温存してきた。金利が膨らむにもかかわらず、塩漬け土地も長年“放置”。団塊の世代などの大量退職に備え、退職金の財源も確保してこなかった。
こうした行き当たりばったりの町政、問題の先送り体質も財政難を深刻化させた大きな要因だ。
これまでなら、財政難に陥っても交付税や有利な起債があった。金融機関も自治体になら安心して融資する。「これが健全な財政運営に対するモラルハザード(倫理観の欠如)を招いた」という国の指摘も、的外れではないだろう。
「再建団体になった方が楽」というのは、地域経営を託された責任の放棄にも等しい。「国が悪い」と言う前に、自治体側が襟を正すべき問題は多々ある。
だが、それだけで地方の窮状が改善されないことも明白だ。過疎高齢化が加速し、息も絶え絶えな地方自治体の「喘(あえ)ぎ」に、国も真剣に耳を傾けるべきだろう。「国」対「地方」という対立の構図が続く限り、問題は何も解決されない。
これまで、行政に対する有権者の発言力、影響力を増すため、投票率の低い若年層を中心に、選挙に行って投票することを強く勧めてきた。
しかし、投票による意思表示だけでは限界がある。選挙終了後、有権者の行政への影響力が急速に落ちてしまう可能性がある。その結果、投票期間中に有権者に約束したことが実際には、全く行われないというリスクが生じることになる。従って、投票も重要だが、より重要なのは、首長と行政に対し、選挙前に約束した政策課題をきちんと実行させる仕組みをどう作るかということである。
本紙の提案はマニフェスト(公約)に対して、必ず数値目標と、その目標を達成するための行動計画をセットで提示するよう義務づけることだ。
そして、達成できなかった時は「なぜできなかったのか」についての説明を義務づける。もちろん、さまざまな外部要因で達成できないこともあるだろう。その場合にも、きちんと説明してもらうことが、目標達成のための方向修正を首長、行政に促すことになる。コミットメントと結果に対する説明責任がセットになっていれば、次の選挙の時、その候補者を選ぶべきかどうかの分かりやすい判断材料になる。
このような数値目標は、企業の経営ではごくごく一般的なことだ。住民が最も望んでいる格差の是正や教育の充実、子育て環境の整備、情報開示などの分野においては、分かりやすく納得できるような数値目標はまだ、十分には掲げられていない。
さらに、数値目標の実現には、多くの予算配分が必要なケースが出てくるが、現在、予算編成は必ずしもオープンな場で討議されていない。編成時の論議が見えないため、なぜ、ある分野には予算が潤沢に配分され、違う分野には十分な配分がされていないのか、有権者にはたいへん分かりにくくなっている。
従って、数値目標を達成するには、予算編成がオープンな場で話し合われ、それを有権者がしっかり監視できるようにすることが必要だ。すなわち、数値目標の明確化と、それを実行するための予算編成討議の公開、この二つをセットにすることで、選挙と選挙の間でも、有権者の意思が実現しやすい環境が整える。
再建団体の方が楽?
県内のある自治体。市町村合併せず単独自立を余儀なくされている自治体も、財政事情は火の車だ。地方交付税が減らされ、基金も残り少ない。2、3年後、予算を組めるかどうか分からない。
窮状ぶりを訴える首長の口から、地方を切り捨てるような国の施策への恨み節が続く。そして、語気を強めた。
「近い将来、財政再建団体になるかもしれんが、そうなってもかまん。別に悪いことじゃない」、「ここまで追い込んだのは国だ。国が管理して財政を再建して見せてほしい」
他市町村の職員からも最近、「いっそのこと財政再建団体になった方が楽だ」といった言葉を時々聞く。だが、本当にそうだろうか。
議会機能も停止
財政再建団体とは、民間企業の倒産に当たる状態。自治体の標準財政規模に占める赤字額が都道府県で5%、市町村で20%を超えた時、国や県の厳しい管理、監督の下で財政再建を進める。
それでは、再建団体になると具体的にどうなるのか。 例えば、保育料の減免や延長保育などのサービスはなくなる。保育士の数も国の基準通り。保育所の統廃合も進む。乳幼児医療費の助成など市町村が独自で行ってきたサービスも縮小、廃止。市町村道の整備も、基本的に災害復旧工事以外はできない。
予算執行をチェックする市町村議会の機能も、事実上停止される。まさに、自治権の剥奪(はくだつ)と言っていい状態だ。
「国は自治体が『死なない程度』のぎりぎりの予算しか措置しない。サービスは最低、逆に住民負担は最高の水準を強いられる」と、ある職員は指摘する。
昭和30年代、県内でも市町村が財政再建に喘いだ。だがその後、高度経済成長という“神風”が吹いた。交付税措置は拡大され、各市町村は我慢を強いられながらも借金を完済、再建団体から脱却した。
しかし、現在はあまりにも状況が違う。手厚い交付税は期待できないし、経済成長の“神風”など吹く気配もない。今、再建団体に転落したら、何十年かかってもそこから抜け出せない可能性もある。
「『再建団体になった時は、保育料を4万円でも5万円でも支払う』と住民が納得しているならいいが…。首長や職員、議員は再建団体になることの厳しさを、住民にどこまで説明しているのでしょうか」。先の職員は疑問を投げ掛ける。
モラルハザード 《道徳、倫理の欠如》
交付税削減が先行し税源移譲が進まない国の改革に、市町村は不信感を募らせる。しかし、財政がここまで窮迫したのは国の責任だけではない。
不況に苦しむ民間企業を目の当たりにしながら、多くの市町村が「わたり」や退職時の特別昇給など、不適正な給与体系を温存してきた。金利が膨らむにもかかわらず、塩漬け土地も長年“放置”。団塊の世代などの大量退職に備え、退職金の財源も確保してこなかった。
こうした行き当たりばったりの町政、問題の先送り体質も財政難を深刻化させた大きな要因だ。
これまでなら、財政難に陥っても交付税や有利な起債があった。金融機関も自治体になら安心して融資する。「これが健全な財政運営に対するモラルハザード(倫理観の欠如)を招いた」という国の指摘も、的外れではないだろう。
「再建団体になった方が楽」というのは、地域経営を託された責任の放棄にも等しい。「国が悪い」と言う前に、自治体側が襟を正すべき問題は多々ある。
だが、それだけで地方の窮状が改善されないことも明白だ。過疎高齢化が加速し、息も絶え絶えな地方自治体の「喘(あえ)ぎ」に、国も真剣に耳を傾けるべきだろう。「国」対「地方」という対立の構図が続く限り、問題は何も解決されない。
by nakayama-yutaka
| 2009-11-06 00:05
| ノンカテゴリ
|
Comments(2)
Commented
by
一町民 5
at 2009-11-05 21:09
x
もし再建団体になるとどのような事が変わるのか一度夕張のケースで教えてもらえますか? どのようなサービスがなくなり、どのような物の負担が増えるのか、または減るのか。 たとえば病院は?美術館は?第3セクターは?工事中の公共工事は?観光関係の各団体への補助金は?鷺舞保存会などに対する補助金は?どうなるのでしょうか。 内容によって津和野のこれからの観光にも多大な影響があると思われるので心配です。
何にしても津和野町の情報開示が迅速かつ正確にされないといけませんね。 インフルエンザ関係の情報も町のホームページに全然出ていない。
津和野にもオンブズマンが出来ればいいのですが。 無理でしょうね、津和野では。
何にしても津和野町の情報開示が迅速かつ正確にされないといけませんね。 インフルエンザ関係の情報も町のホームページに全然出ていない。
津和野にもオンブズマンが出来ればいいのですが。 無理でしょうね、津和野では。
0
Commented
by
nakayama-yutaka at 2009-11-08 02:34
小学校統合: 7校→1校(幌南小学校を清水沢小学校に統合)
中学校統合: 4校→1校(幌南中学校を清水沢中学校に統合)
軽自動車税UP: 1.5倍/市内施設使用料金UP: 1.5倍
ゴミ有料新設: ゼロ円→家庭用1リットル2円・事業用1リットル13.4円、粗大ゴミ1kg20円
保育料3年据え置き後7年間で段階的にUP、学童保育料金1200円UP
敬老パス: 200円→300円で存続、住民票手数料: 200円UPで、住民票交付手数料300円→500円に、住民票閲覧手数料200円→400円
印鑑登録手数料: ゼロ円→500円、印鑑登録証再交付手数料: 300円→500円、印鑑証明書交付手数料: 350円→500円、証明書手数料: 350円→500円、検診料金: 100円~500円UP、シルバー専用住宅共益費: 1000円→3000円、児童デイサービス: ゼロ円→1回1割負担
市立病院: 2007年度以降公設民営有床診療所に降格、171床→19床に、診療科目9科→6科に、人工透析等終了、療養病床40床は介護老人保健施設に転換等々です。
中学校統合: 4校→1校(幌南中学校を清水沢中学校に統合)
軽自動車税UP: 1.5倍/市内施設使用料金UP: 1.5倍
ゴミ有料新設: ゼロ円→家庭用1リットル2円・事業用1リットル13.4円、粗大ゴミ1kg20円
保育料3年据え置き後7年間で段階的にUP、学童保育料金1200円UP
敬老パス: 200円→300円で存続、住民票手数料: 200円UPで、住民票交付手数料300円→500円に、住民票閲覧手数料200円→400円
印鑑登録手数料: ゼロ円→500円、印鑑登録証再交付手数料: 300円→500円、印鑑証明書交付手数料: 350円→500円、証明書手数料: 350円→500円、検診料金: 100円~500円UP、シルバー専用住宅共益費: 1000円→3000円、児童デイサービス: ゼロ円→1回1割負担
市立病院: 2007年度以降公設民営有床診療所に降格、171床→19床に、診療科目9科→6科に、人工透析等終了、療養病床40床は介護老人保健施設に転換等々です。